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大通どうぶつ通信 vol.18

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「わんちゃん・ねこちゃんのてんかんについて」


はじめに
今回はわんちゃん・ねこちゃんのてんかんについてお話します。
てんかんとは脳内の神経細胞が異常興奮することにより様々なタイプの発作を起こす脳の病気のことを言います。この発作が24時間以上の間隔をあけて、最低2回以上起きることでてんかんの可能性が疑われます。
実際初めててんかん発作を起こしている子を目の当たりにすると、その状態に驚きこのまま死んでしまうのではないかと心配になる飼い主さんも多いと思います。しかし通常、ほとんどのてんかん発作は数分以内に治まり、動物たちは何事もなかったかのように普段どおりの行動に戻ります。
今回はこのてんかんの診断や治療について詳しくご説明していきます。

1. 症状
  • 硬直する(体に無意識に力が入り硬くなる状態)
  • 手足をバタバタさせる
  • あごを強く噛みしめる
  • 震えながらよだれが出る
  • はっはと呼吸が荒くなる(パンティング)
あくびを繰り返す、顔面がぴくぴくけいれんする、などの小さな発作がみられることもあります。発作時に失禁、脱糞したり、大きな声で鳴いたりすることもあります。

心配でつい体を触ったり呼びかけたりしてしまいがちですが、余計な刺激を与えることになるので控えましょう。また周囲に物がある場合はぶつかってケガをすることがありますので、物をよけて静かに見守るようにしましょう。発作があった日と、発作の始まりから終わりまでの時間(持続時間)をメモしておくと診察の際に役立ちます。

2. 診断
てんかんの診断は基本的には除外診断になります。ひとつひとつ可能性をつぶしていって、最終的にてんかんと診断をつけます。
診断には3段階の手順があり、段階を追うごとに診断の精度が高まります。
まずは問診で詳しく発作が起きた時の状況を伺います。
次に身体検査をして、体温や心拍数、聴診などをします。また、神経学的検査を行い、意識状態や反射の異常がないか確認します。
その他に、血液検査、尿検査などを行い、異常がないか確認します。また、24時間以上あけて2回以上のてんかん発作をおこす、初めての発作の発症が生後6ヶ月以上6歳以下である、といったこともてんかんの診断条件になります。
ここまでが、第一段階の診断になります。ここまでの検査は1次病院で、麻酔などの侵襲がなく可能な検査です。
次に、第二段階の診断としては総胆汁酸の測定(肝臓の血管の異常がないか調べる検査で、血液検査になります)、脳のMRI検査、脳脊髄液検査、を行います。MRIと脳脊髄液の検査に関しては麻酔が必要な検査になり、MRI施設のある二次診療施設に行く必要があります。
第三段階の診断としては、てんかん発作に特有の脳波測定を行います。これは専門医のいる大学などで検査を行います。

以上の検査を全部行うことで、てんかんの診断の信頼度を高めることが出来ます。しかし実際は第三段階まで検査することはまれで、第二段階までで診断をつけて治療にはいることが多いです。

治療と管理について
治療としては、てんかん発作を抑える薬を内服します。治療の目標が「発作の回数を少なくする」ことにあるため、発作頻度が月に1回未満の場合、通常は治療開始とはなりません。また「発作を完全になくす」ことは出来ません。発作の発現が3か月に1回程度まで抑えることが治療の最終目標ですが、発作の発現を抑えられるようになるまで年単位で時間がかかることもあります。薬を飲みながら定期的に血液検査を行い、発作の回数と血液中の薬の濃度が適切な量かを確認しながら投薬量を決めていきます。
てんかんは基本的には治る病気ではありませんので、薬は生涯必要になります。

治療開始のタイミング
発作が一度起きたからといってすぐに治療が必要なわけではありません。以下の条件を満たしたときに、治療をスタートします。
  • 6ヶ月間で2回以上のてんかん発作が起きる
  • てんかん発作重積(1回目の発作がおさまる前に次の発作が起きること)や群発発作(1日に間隔をあけて2回以上発作を起こすこと)を起こす
  • てんかん発作を起こした後の異常行動(攻撃性が増す・物にぶつかりながら歩くなど)が深刻で24時間以上継続する
  • てんかん発作の持続時間や頻度が徐々に悪化している
てんかん重積や群発発作がひどい時は、入院下での治療が必要な場合もあります。

飼い主さんが理解しておくべきこと
てんかん発作を持病としてもつ動物たちが幸せに暮らしていくには飼い主さんの理解、協力、治療への参加が必要不可欠です。
以下に、飼い主さんが理解しておくべき事項をあげます。
  • 抗てんかん薬療法が不可欠であり、ほとんどが生涯治療になる
  • 投薬治療の目的(発作をゼロにするのではなく頻度を下げる)
  • 決められたタイミングで投薬することの重要性
  • 自分の判断で投薬量を変更しない
  • 投薬治療の副作用
  • てんかん日誌をつける(起きた日と持続時間を記録しておく)
  • 薬剤の有効性を確認するため定期的に動物病院を受診
  • 発作を最小限に抑えるため、投薬量を診察で適宜調整する
  • 常にてんかん重積の可能性があることを理解し、その対処法を知る
  • 診断、治療にかかる費用
  • 抗てんかん薬と飲み合わせの悪い薬があることを知る
  • 突然の休薬や減量は症状を悪化させる可能性がある
  • 食事内容の変更や消化器症状(嘔吐や下痢)は薬の吸収を阻害する可能性がある

自宅で発作が起きてしまったら
では実際にてんかん発作を起こしてしまったときはどうすればいいのでしょうか。 てんかん発作の際、飼い主さんが出来ることは少なく基本は自然におさまるのを待ちます。長い時間の発作の際には自宅で発作を止める座薬を入れることもあります。嘔吐を伴う場合は気道が詰まって呼吸困難に陥ることがありますので、口の中の異物を取り除いてあげると良いでしょう。またてんかん発作の前触れとして、妙に甘えたり、水をたくさん飲んだり、どこかに隠れてしまったりするなどの症状を示す場合があります。この様な徴候が見られたら、抱き上げて落ち着かせてあげたり、高い所であれば床に降ろし、クッションを敷くなど危険のない状況を作ることが重要となります。また発作の頻度や動画を記録し、そのパターンを把握することで診察時の役に立ちます。

最後に
「てんかん」と聞くと身構えてしまいがちですが、きちんと治療をし、適正にコントロールができれば、健康な子と変わらない生活を送ることができます。また、てんかんの種類にもよりますが平均寿命も健康な子とそれほど変わらないというデータもでています。 上手にてんかんと付き合って、より良い生活を送れるようにしてあげることが大切ですね。







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