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大通どうぶつ通信 vol.17

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「わんちゃんの膝蓋骨脱臼について」


はじめに
今回はわんちゃんの膝蓋骨脱臼についてお話します。
膝蓋骨は人で言ういわゆる「膝のお皿の骨」の部分です。主な役割は「膝を伸ばす」ことです。
膝蓋骨脱臼とは、膝蓋骨(膝のお皿)が滑車溝(お皿のはまっている溝)の内側や外側またはその両方にずれる病気です。脱臼すると、その程度によって、足をつけない、膝を伸ばせない、骨の変形、靱帯の損傷などを起こします。わんちゃんの整形外科疾患のなかで、最も多い疾患の1つです。
原因としては
① 先天性(遺伝性も含む)
② 後天性(外傷など)
があります。
先天性の場合は生後1~2ヶ月で発症する場合があります。また両方の足に異常がある事が多いです。一般的には小型犬は内側に脱臼し、大型犬は外側に脱臼することが多いとされています。小型犬ではチワワ、トイ・プードル、ポメラニアン、ヨークシャーテリア、パピヨン、キャバリアなど、中、大型犬ではラブラドールレトリバー、フレンチブルドッグ、ブル・テリアなどでよく見られます。また近年では猫でも発症が多く報告されています。
今回はこの膝蓋骨脱臼についてご説明していきます。

膝蓋骨脱臼のグレード分類と症状
重症度に応じて4段階に分類されます(グレード1~4)。
グレード1脱臼の程度(外れる角度)は30度未満とされ、飼い主さんが自宅で気づくことはありません。また症状もありません。
グレード2脱臼の程度は30~60度未満で、脱臼しても自然に元の位置に戻ります。この段階で症状が出てきます。具体的な症状としては、遊んだり走ったりして膝に負荷がかかると急に足をあげてつけなくなったり、スキップをするような歩き方になったりします。通常、数分後には普段通りに歩けるようになります。また抱っこした際に後ろ足付近にコキンとなる感覚や音を感じることがあります。
このグレードからが、手術の適応になることが多いです。
グレード3脱臼の程度は60~90度で、手で元の位置に戻すことが可能ですが、再度すぐ脱臼してしまいます。跛行(びっこをひくこと)が持続したり、ジャンプや階段の昇り降りが出来なくなることがあります。一方で脱臼自体に慣れてしまうこともあり、症状がなくなることもあります。
グレード4脱臼の程度は90度で、関節ははずれたまま固まってしまい、元の位置に戻すことが出来ない状況です。常に膝を曲げたような(しゃがんだ)姿勢となり、歩き方に違和感があります。運動量が減ることから徐々に筋肉量が減少し、足をつきづらい状態になっていきます。このグレードは手術を行っても完全な機能回復が期待できない状態です。

診断について
 診察時の触診がとても重要です。骨の変形の程度やその他関節疾患の合併症が無いか、また手術法の選択をするためにレントゲン検査やCT検査が有効となります。

治療(内科療法と外科療法)
治療に関しては、犬種、年齢、脱臼のグレード、活動性や飼育状況により変わってきます。一般的には、小型の成犬(2歳以上)では、疼痛や機能障害、関節炎を認めない軽度な脱臼であれば内科治療をお勧めしています。内科療法では、膝関節の可動域(動かせる範囲)と筋肉の維持のために屈伸運動などのトレーニングを行ったり、関節をケアするサプリメントを投薬します。また、痛みがある場合は痛み止めの薬を併用することもあります。
一方、2歳未満の疼痛を繰り返すグレード2以上の症例、骨の変形が認められる症例に関しては、犬種を問わず外科手術をお勧めしています。特に大型犬では成長期の骨の成長速度が速いため脱臼の変化も早くなります。そのため小型犬に比べ、早い段階で外科手術の判断が必要となることがあります。
また小型犬の中でも、トイ・プードルでよく認める先天性の膝蓋骨脱臼の症例では、生後数ヶ月での手術が必要になる症例もいます。中年齢以降で疼痛を繰り返す症例に関しても手術は行えますが、通常関節炎を伴っていることが多いため、十分な機能回復は望めない場合が多いです。
このように、重症になってしまうと十分な機能回復が期待できなくなるため早い段階での手術への判断が重要となります。
手術の最大の目的は痛みの軽減と、脱臼を繰り返す中での前十字靭帯や半月板の損傷を防ぐことにあります。

膝蓋骨脱臼がある子におうちでできること
軽症例から術後の子まで、以下のようなことに気をつけましょう
① 体重管理:最も重要となります。適切な体型を維持することが膝への負担を最小限に減らすことに繋がります。
② 適度な運動:筋肉量を維持し、関節の可動域を保つために運動は必要です。屈伸運動やバランスボールなど、また、日々の散歩も大切です。
ただし、床やフローリングなどの滑りやすいところでの過度なボール投げ運動や膝を急転回させるような運動は控えましょう。
③ 環境の整備:滑りにくい床にするためにマットをひく、ソファや椅子などに飛び乗ったり降りたりしないように、スロープをつける、足が滑らないように定期的に爪や足裏の毛を整える、などを心がけましょう。
膝蓋骨脱臼は発生率が非常に高いですが、症状がない場合、飼い主さんは気づいてない場合がほとんどです。
気軽に病院を受診してもらい、膝の触診やその他の身体チェックを定期的に行っていくことが大切ですね。







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