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大通どうぶつ通信 vol.11

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「慢性腎臓病について」


はじめに
みなさん腎臓ってどんな臓器か知っていますか?腎臓は左右に一対ずつあり、実に様々な役割を持つ臓器です。そのどれもが、体のバランスを保つために非常に重要な役割をしています。 具体的には下のような役割があります。

① 尿の産生:血液を濾過し尿を産生することで体内の老廃物を排泄する
② 造血機能:赤血球の生成を刺激するホルモンを分泌する
③ 血圧調節機能:血圧調節に関与するホルモンを産生する
④ 骨代謝機能:ビタミンDを活性化し、消化管からのカルシウムの吸収を促進する

このように様々な働きを持つ腎臓が障害を受け機能が低下する状態を腎臓病と言います。腎臓病には急性のもの(急激に発症し進行するもの)と慢性のもの(ゆっくりと進行するもの)が存在します。今回はこの慢性腎臓病について詳しくお話ししていきます。

慢性腎臓病はわんちゃん・ねこちゃんでよく遭遇する疾患です。これは3ヵ月以上持続した腎臓の障害のことを指します。一度障害を受けた腎臓はその機能を回復することが出来ません。また、腎臓は予備能力が高いため、初期段階では明確な症状を示さず、かなり病状が進行してから初めて症状がでるのも特徴の一つです。腎臓は数十万個のネフロンというものの集合体として成り立っており、このネフロンが障害されることにより腎臓病となります。正常に機能するネフロンが1/4(25%)以下になってようやく症状が出始めます。そのため早期に発見することがなかなか難しい疾患のひとつなのです。

症状
血液中の老廃物を濾過できなくなり必要な水分の再吸収ができなくなること、老廃物が体内にたまっていくことで症状が現れます。

① 尿量および飲水量の増加⇒水分の再吸収ができないことで身体が脱水し、その結果飲水量が増える
② 食欲不振に伴う体重減少
③ 嘔吐および便秘、口内炎、痙攣⇒老廃物が身体にたまっていくことで起きる
④ 貧血⇒造血ホルモンの産生減少により起こる
⑤ 高血圧⇒血圧調整ホルモンの産生減少により起こる

検査
腎臓病を特定するには以下のような検査があります。

① 尿検査⇒尿たんぱくや尿比重(尿の濃さ)などをみます
② 画像検査(レントゲンおよび超音波)⇒腎臓の形の異常がないか、結石などはないかをみます
③ 血液検査⇒腎機能のマーカーになる数値を測定します
④ 血圧測定⇒高血圧をおこしていないかみます

膀胱炎をくりかえす、尿中に蛋白質が多く出ている、血圧が高いなどの場合には、慢性腎臓病の進行が速い可能性があります。

治療
慢性的に障害を受けた腎臓はもとの健康な腎臓に戻ることはありません。そのため治療の目的は、いかに腎臓病の進行を遅くするか、ということになります。
具体的には以下のような方法があります。

① 食事療法
② 内科療法(お薬による治療)
③ 輸液療法

食事はとても重要です。食事中のリンやたんぱく質の制限が腎臓病の進行を遅らせるという報告がされています。そのため当院でも腎臓病と診断された子には早期から療法食のご提案をするようにしています。しかし具合が悪く、食欲の低下した子では療法食を十分に食べられないことも多く、輸液療法で状態を改善してから食事療法を始めるケースもあります。
内科療法では、血圧や尿蛋白が基準値を超えている場合に降圧剤などのお薬を処方します。また血液検査で尿素窒素やリンに異常がある場合には、体内に残ってしまった毒素の吸着剤やサプリメントをご提案する場合もあります。しかし、特にねこちゃんでは、そもそも投薬が難しい子も多いので、当院では必要最小限のお薬を相談しながら処方するようにしています。
輸液療法は、脱水が確認される場合に実施します。慢性腎臓病が進行すると腎臓で再吸収されずに尿として出ていってしまう水分が増え、飲水だけではそれを補えず身体が脱水します。この脱水のコントロールに点滴が必要不可欠となります。点滴によって水分を入れてあげることで、身体の水分のバランスを整えます。入院での静脈点滴や通院での皮下点滴があります。また、頻回の皮下点滴が必要な子にはご自宅で飼い主さん自身に点滴をしていただく場合もあります。

さいごに
慢性腎臓病は早期発見がなかなか難しい病気です。わんちゃんねこちゃんの状態に合わせ、定期的に尿検査や超音波を実施することで、血液検査で異常が見つかる前に慢性腎臓病の発見につなげることができます。慢性腎不全と診断されたら、食欲の安定を第一に、その都度治療内容を相談しながら進めていきます。

一度きりの治療で終わる病気ではなく、長期に、継続的に治療が必要な病気です。ご不安な点、ご不明点がございましたらいつでもご相談ください。






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