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大通どうぶつ通信 vol.21

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「わんちゃん・ねこちゃんの白内障について」


はじめに
おうちのわんちゃん、ねこちゃんの目がなんだか白っぽいなと感じたことはありますか?白内障は一般的にもよく知られた病気ですが、実は視力以外にも合併症など注意しなければいけない症状がたくさんあります。今回はそんな白内障についてお話します。

「白内障」は目の水晶体というレンズにあたる部位が混濁(白濁)している状態のことです。この混濁の程度により初発期・未熟期・成熟期・過熟期の4つのステージに分類されます。白内障は進行と共に視力の障害に繋がることはよく知られていますが、実は合併症(緑内障、ぶどう膜炎、網膜剥離など)を生じることが多く、その合併症を適切に診断し治療することが重要です。
では、その原因や治療法についてみていきましょう

眼の構造
眼の構造


1. 原因
~原因としてあげられる主なもの~
① 先天性
原発性と続発性に分かれます
M.シュナウザー、ウェスティー、キャバリア、アメリカンコッー猫では稀ですが、バーマン、ヒマラヤンなどで報告があります。
・原発性:水晶体の混濁のみの異常。突然変異や母体の感染症から
・続発性:小眼球症・小水晶体症・水晶体欠損・瞳孔膜遺残などの形態的な異常。

② 遺伝性
若~中齢での発症が多く、好発犬種はT.プードル、M.シュナウザー、ビションフリーゼ、アメリカンコッカー、G.レトリーバー、ボストンテリアなど。水晶体後嚢の混濁から始まります。若齢ほど進行は早く、ぶどう膜炎の併発が多いとされています。
猫では稀ですが、ペルシャ、ヒマラヤン、ロシアンブルー、ブリティッシュ、ベンガルなどで報告があります。

③ 代謝性
おもに糖尿病による白内障のことです。糖尿病性白内障の進行は極めて速いとされています。糖尿病と診断されて6ヶ月後に約半数、1年後には約7割が白内障と診断されたという報告があります。初期に糖尿病のコントロールをすることで発症や進行を遅らせることはできますが、一度混濁して白くなった目は治りません。
また腎不全や甲状腺機能低下症による低カルシウム血症も白内障の原因とされています。

④ 中毒性
高用量もしくは長期的な薬剤の影響で生じる白内障のことで、原因となる薬剤としてはケトコナゾール・プロゲステロンなどが報告されています。

⑤ 栄養性
人工哺乳を受けた子犬や子猫に見られることがあります。アルギニンなどのアミノ酸欠乏が原因とされています。一般的には軽症で視覚障害は出ないとされており、成長と共に目立たなくなることが多いとされています。

⑥ 外傷性
鈍性外傷・穿孔性外傷・異物など、傷が原因で起こります。猫ではこの原因が多いです。

⑦ 放射線性
頭蓋内や鼻腔内疾患により放射線治療を行った際の副作用として起こる白内障です。犬、猫ともに起こります。

⑧ 他の眼科疾患
ぶどう膜炎・緑内障・水晶体脱臼などの疾患の結果、白内障を発症する場合もあります。

⑨ 加齢
白内障全体の約3割程度で、大型犬では7歳以上、小型犬では9歳以上の半数で発症しているという報告もあります。その原因は現在でも不明と言われていて、遺伝性なのか加齢性なのかを判別することは困難な場合があります。一般的に進行は遅いといわれています。また、「目が白くなってきた」と相談を受ける症例の多くで、白内障との鑑別が重要なのが「核硬化症」という病態です。核硬化症は7歳以上のすべての犬で認める加齢性変化です。水晶体の中心部が青白く見えることから白内障と誤解してしまいますが、この疾患は視覚障害を引き起こさないのが大きな違いで、治療も必要としません。
猫でも13歳以上の半数が加齢性の白内障を発症しているという報告があります。また、15歳以上の半数が核硬化症を発症しているとも言われています。

2. 検査および診断
眼科検査には以下のような検査があります。
① 視覚検査・眼科神経学的検査: 光への反応をみたり、瞬きの有無などをみたりします。

② 眼圧検査: 動物専用の眼圧計で測定します。白内障の合併症でもある緑内障やぶどう膜炎の診断ができます。緑内障であれば眼圧は上昇し、ぶどう膜炎であれば低下します。

③ 細隙灯顕微鏡: 細い光の筋(スリット光)を眼球に当て、眼球の断面の構造を確認します。水晶体全域の異常を観察することができます。

④ 眼底検査: 眼の一番奥を見ることで、網膜剥離や血管の異常、視神経の異常がないかを調べます。検査をする際は散瞳処置(瞳孔を開かせる点眼)をしてからが望ましいです。

⑤ 超音波検査: 水晶体の濁りの有無、厚みの変化、脱臼の有無、眼底の状態の確認など、多くの情報が得られます。

⑥ 網膜電位図検査: 白内障の手術前に必要な検査です。異常を認める場合には手術をしても視力の回復は見込めないため、手術適応外となります。

3. 治療、合併症について
白内障の治療には、外科療法(手術)と内科療法があります。
白内障手術の目的は、視力の維持もしくは回復を図ることと、白内障による合併症のリスクを下げることです。
手術は現在の獣医療では視力の回復を望める唯一の方法になりますが、100%成功するものではないこと、術後の合併症により状態が悪化する場合があることなどがリスクとして挙げられます。また、どのタイミングで手術をするのか、すでに合併症を起こしていないかなども重要になります。
内科療法としては白内障の進行を遅らせる点眼の治療がいくつかありますが、実はこれらは科学的に効果が証明されたものではありません。事実上白内障の治療薬というものは存在しないのです。しかし合併症のコントロールをするという点では、内科療法(点眼や飲み薬)は重要になってきます。
白内障の合併症としては、ぶどう膜炎、水晶体脱臼、網膜剥離、続発性緑内障などがあります。これらの合併症は成熟期や過熟期で起こりやすいとされています。疼痛を伴うものですし、適切な治療をしないと失明や、重症の場合は眼球摘出をしないといけないこともあります。そのため、白内障に伴う合併症のコントロールは非常に重要です。


さいごに
白内障は普段の生活で気づきやすい疾患のひとつです。目が白いと感じる場合には、一度ご相談ください。
白内障と診断される場合、ステージはどれくらいなのか、合併症はないのかなどを確認し、どのような治療が必要なのかをしっかりと相談していきましょう。






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