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大通どうぶつ通信 vol.14

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「クッシング症候群について」


はじめに
今回は副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)についてお話します。副腎とは、腎臓のすぐそばにあり、身体を維持するために必要不可欠なホルモンを分泌する大切な臓器です。健康な子では副腎から出るホルモンの量は調節されていますが、クッシング症候群の子では副腎の働きが過剰になり、多量のホルモンが持続的に分泌されることによりバランスが崩れ、様々な負の症状が現われます。原因によっては命に関わることもある怖い病気です。
代表的な症状として、多飲多尿(普段よりもたくさん水を飲んでたくさんおしっこをすること)や腹囲膨満(妊娠したようにお腹が張ってくる)、皮膚症状などがあります。また血液検査では肝臓の数値が異常となることが多いです。
わんちゃんでは珍しい病気ではなく、有病率は0.3%ほどと言われています。多くが8歳以上で発症し、女の子の方がやや多く、犬種による病気の発症に差はないと言われています。一方猫ちゃんでは非常にまれな病気です。今回はわんちゃんのクッシング症候群についてクローズアップしていきます。
それでは具体的に副腎皮質機能亢進症の診断や治療についてご紹介していきます。


クッシング症候群の分類とそれぞれの原因
クッシング症候群の原因は、
① 下垂体性クッシング症候群
② 機能性副腎皮質腫瘍
③ 医原性クッシング症候群
の3種類に分類されます。

① 下垂体性クッシング症候群
脳の下垂体と呼ばれる部位の異常です。下垂体からは、副腎のホルモン分泌を刺激するホルモンが出ています。その刺激ホルモンが過剰に分泌される結果、副腎からのホルモンも過剰に分泌され、クッシング症候群となります。これが全体の約9割を占めます。

② 機能性副腎皮質腫瘍
副腎が腫瘍化し、自律的にホルモンを分泌し続けることでホルモン過剰になり、クッシング症候群を発症します。こちらが全体の約1割を占めます。

③ 医原性クッシング症候群
自然発症したものではなく、薬としてグルココルチコイド製剤(ステロイド)を長期投与することによりクッシング症候群と同じような症状を示す状態のことをいいます。


クッシング症候群の症状は?
多飲多尿・多食・腹囲膨満・皮膚のトラブル(左右対称の脱毛・色素沈着・面皰・発毛異常)・肝臓の腫大・高血圧など

診断はどうやってするの?
診断には以下のような項目があります
・血液検査:肝酵素やコレステロールの上昇
・ACTH刺激試験:ホルモン剤を注射し、1時間後の体内のホルモンの反応を血液検査で確認する検査
・尿検査:尿比重の低下・尿蛋白陽性を確認
・腹部エコー検査:肝臓の腫大・副腎の腫大を確認
・CTおよびMRI検査:副腎腫瘍の際にはCTにて血管や他の臓器(肝臓・リンパ節・肺など)への浸潤の程度を確認します。一方、MRI検査では、脳の下垂体の腫大の程度を確認します。必須の検査ではありませんが、治療を開始する前に確認しておくとより安心・安全です。

治療にはどんな方法があるの?
原因により異なりますが、主に飲み薬で治療します。
① 下垂体性クッシング症候群
副腎から過剰に分泌されているステロイドホルモンの合成を抑制する薬を飲んで、ホルモンを適正な量にコントロールしていきます。下垂体性の中でも、MRI検査で下垂体に腺腫があることがわかっているわんちゃんでは放射線治療が有効になります。

② 機能性副腎皮質腫瘍
基本的には腫瘍化した副腎を外科手術で切除する必要があります。切除が困難な場合は、下垂体性クッシング症候群の治療と同様に飲み薬で経過を見ていくことになります。

③ 医原性クッシング症候群
できる限り早期にステロイドの投薬を中止することで症状がなくなるかを確認していきます。

治療の目標は?
多飲・多尿・多食といった症状を改善させることです。逆に、この症状がない場合は治療の必要はなく、経過観察となります。
お薬での治療開始すると、通常1週間以内に飲水量が減少します。薬の量が適切かどうかを判断するために最初は1~2週間ごとに診察が必要です。安定した後は、自宅での飲水量をモニターしていただきながら、1ヵ月毎の定期検診となります。また食欲が低下したり、下痢などの消化器症状を認める際には、薬が効きすぎている可能性(副腎皮質機能低下症:アジソン病)もあるためすぐに診察に来ていただくようにしています。

さいごに
クッシング症候群は一見するとご飯をよく食べ、お水を良くのみ、体調が悪いようには見えないかもしれません。しかし、前述したように放っておくと命に関わることもある病気です。
飲水量が多かったりおしっこが増えたり、普段と何か違うなと感じる時は、いつでも病院にご相談ください。クッシング症候群だけでなく、様々な病気を早期に見つけることにつながります。






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