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大通どうぶつ通信 vol.15

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「わんちゃんの甲状腺機能低下症について」


はじめに
今回はわんちゃんの甲状腺機能低下症についてお話します。この病気は、中年齢のわんちゃんで前回ご紹介したクッシング症候群に次いで多く見られるホルモン疾患です。甲状腺のホルモンは、体の代謝を促進させる働きがあります。甲状腺機能低下症ではこのホルモンが少なくなってしまうので、基礎代謝が低下し様々な症状がでてきます。主な症状は、元気がなくなる・寒さに弱くなる・皮膚・被毛の変化(鼻や尾の脱毛、皮膚が脂っぽくなる脂漏症)などです。皮膚の変化の中には、粘液水腫といって上まぶたや唇が腫れぼったくなって顔の外貌が変わってしまうというような症状もあります。また、進行してくると神経症状(顔面神経麻痺や昏睡など)を示す場合もあります。国内での好発犬種はアメリカン・コッカー、ゴールデン・レトリーバー、シェルティー、ミニチュア・シュナウザー、柴犬、ビーグルと言われています。また有病率は約0.4%程度とされています。 それでは具体的に甲状腺機能低下症の診断や治療についてご紹介していきます。

甲状腺機能低下症の分類
甲状腺機能低下症は先天性と後天性の2種類に分類されます。 先天性はクレチン病と言われ、国内では極めてまれな病気です。一方、後天性はホルモン分泌の低下がどこで起きているかによって、原発性(甲状腺が原因)、二次性(下垂体が原因)、三次性(視床下部が原因)の3種類に分類されます。わんちゃんでは甲状腺機能低下症の99%が原発性とされています。甲状腺が委縮して小さくなり、ホルモン分泌能力が失われていきます。

甲状腺機能低下症の症状は?
  • 元気消失:散歩に行きたがらなかったり、ずっと寝ているなど、一見すると、歳のせいかなあと見落とされがちな症状です。
  • 皮膚の症状:皮膚の肥厚、ターンオーバーの低下により皮膚が脂っぽくなる(脂漏症)、フケが増える、皮膚感染症にかかる、鼻の頭や尾の脱毛などです。
  • 神経症状:四肢のふらつき(姿勢反応の低下)、顔面神経麻痺など、が見られます。
    低体温・徐脈・肥満:新陳代謝が落ちることによって起こります。

診断はどうやってするの?
  • 血液検査:甲状腺機能低下症の子では軽度の貧血、コレステロールや中性脂肪の異常高値(約70%)が認められることが多いですが、シュナウザーやシェルティーではもともと家族性に中性脂肪が高いことがあり、これだけで甲状腺機能低下症を疑うことはできません。
  • 内分泌検査:犬甲状腺刺激ホルモン(cTSH)、T₄(甲状腺ホルモン)、fT₄(遊離甲状腺ホルモン)を確認します。これらの数値は甲状腺以外の疾患でも変化することがあるため(※euthyroid sick症候群)、ほかの疾患が隠れていないかを確認しながら慎重に診断していきます。
    ※ euthyroid sick症候群:ストレス、クッシング症候群、糖尿病、腫瘍、心不全・腎不全、薬剤などの影響で甲状腺の検査データが純粋な甲状腺機能低下症と似通った値を示す病態のこと
  • 頚部エコー検査:萎縮した甲状腺を確認(3㎜以下)して診断の材料としますが、重度に萎縮している場合は確認できないこともあります。
  • 頚部CT検査:萎縮した甲状腺を確認するには、一番優れた検査法となりますが、動物の場合、鎮静もしくは麻酔が必要となり検査自体のハードルが高いのが現状です。

治療にはどんな方法があるの?
基本的には生涯にわたり甲状腺ホルモン製剤を飲み補充をします。薬には液体タイプのものと錠剤タイプのものがあります。液体タイプのものは中~大型のわんちゃんに処方することが多く、錠剤タイプのものは小型のわんちゃんに処方しています。

治療の目標は?
単純ですが症状を改善させることです。活動性や皮膚の肥厚、神経症状は1ヶ月ほどで改善を認めることが多く、脱毛の改善には3~4ヶ月ほど要する傾向にあります。
投薬開始から2週間で再度内分泌検査を行ない、甲状腺ホルモンの数値が適正範囲に入っているか確認します。その後は定期チェックとして3か月ごとに身体検査をメインに行い、必要があれば内分泌検査を実施しています。適切な治療が行われていれば、予後は良い疾患です。
中には薬の量が多くなりすぎて、食欲不振や頻脈、興奮、体重減少などを認めることがありますので、この際には一旦投薬を中止し、症状がなくなった時点で少ない量から再開する必要があります。

さいごに
甲状腺機能低下症ははっきりとした症状が乏しく、最近なんとなく元気がなくなったけど歳のせいかなあ、、、などと見過ごされているケースが比較的多くあります。また被毛がフケや脂っぽく皮膚の細菌感染を繰り返したり、そんなに食べていないのに体重が増えている、ということで検査をしてみたらわかったというケースも多く見られます。
甲状腺機能低下症は、様々な病気とも関連する疾患ですので、早期発見早期治療につながります。似たような症状で気になる際には、病院にお気軽にご相談くださいね。





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