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大通どうぶつ通信 vol.13

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「ねこちゃんの糖尿病について」


はじめに
前回の大通どうぶつ通信ではわんちゃんの糖尿病についてお話しました。今回はねこちゃんの糖尿病についてお話します。実はわんちゃんに比べてねこちゃんの方がより糖尿病は身近な病気です。国内のねこちゃんの糖尿病有病率は約0.5%でわんちゃんよりも高く、また加齢に伴いその数値は上がり、10歳齢では1.8%という報告があります。中でも去勢した肥満の男の子が発症しやすい傾向にあります。種類によっての病気の発症には差はないと言われています。
ねこちゃんの糖尿病は、診断時の症状がわんちゃんに比べて様々ですが、一番飼い主さんが気づきやすい症状は体重の減少、多飲多尿(普段よりもたくさんお水を飲んでたくさんおしっこをすること)、多食といった症状です。
また、ほとんど症状がなく、健診で血液検査をしたところ発覚する場合や、逆に症状が進行していて元気食欲もなくかなりぐったりした状態で糖尿病が見つかる場合もあります。
糖尿病は早期に発見、治療し、合併症を起こさないように管理していくことで、寿命を全うできる病気です。中には治療をしていく中で糖尿病が完治するねこちゃんもいます。
それでは具体的に糖尿病の診断や治療についてご紹介していきます。

糖尿病の原因は?
ねこちゃんの糖尿病はその原因から何種類かに分類されますが、なかでも多いのが、ヒトの糖尿病でも90%を占める2型糖尿病(インスリン分泌が低下するタイプ)、膵炎に続発する糖尿病、薬が原因になり起こる医原性糖尿病などです。

2型糖尿病
インスリンを分泌している膵臓のβ細胞の異常により、インスリンの分泌低下が起きたり抵抗性が増したりすることで、インスリンが不足し糖尿病を発症するタイプ。肥満の去勢した男の子に多いです。
膵炎による二次的な糖尿病
ねこちゃんの慢性膵炎は高齢期になってくるとよく見られる病気です。この慢性膵炎により膵臓のβ細胞が破壊されインスリンの分泌が低下し糖尿病を発症します。
慢性膵炎がある場合、腸、胆道系などにも炎症が及ぶことがよくあり、それにより食欲不振やインスリンの抵抗性が高くなってしまうと血糖値のコントロールが難しくなり治療が大変になります。
医原性糖尿病
アレルギー疾患や口内炎などの治療に使うグルココルチコイド(ステロイド)の投薬によりインスリン抵抗性が高まり、糖尿病を発症します。

糖尿病の症状は?
特徴的な症状ははじめにも書いた通り、多食、多飲、多尿、体重減少などです。
また、約20%の割合で末梢神経障害を併発し、かかとを床につけたまま歩く様子(蹠行)が見られます。
また、糖尿病が進行するとケトアシドーシスという病態に陥り、急激に痩せ、食欲元気がなくなり命に関わる状態になってしまいます。

診断はどうやってするの?
血液検査:持続的な高血糖、空腹時高血糖などの確認
また、他の併発疾患(膵炎、腎臓病、甲状腺機能亢進症など)がないかの確認
尿検査:尿糖やケトン体(ケトアシドーシスの判断)が出ているかの確認
エコー検査:お腹のエコーを実施し、膵臓や消化管、胆道系の炎症がないかを確認

治療にはどんな方法があるの?
基本的な治療の軸はわんちゃんと同じで、以下にあげるようなものがあります。
インスリン療法:自宅での1日2回のインスリン注射による治療
食事療法:食後の急な血糖値の上昇を防ぐ食事(ドライフードよりウェットフードのほうがより好ましい)
ただ、ねこちゃんはフードの好き嫌いがある子が多いので、無理に食事の変更をするよりは、毎日決まったフードを決まった量食べられることが大事です。

併発疾患の治療:糖尿病のベースに隠れている併発疾患(膵炎、口内炎、膀胱炎などの炎症性疾患、腫瘍、慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症など)がある場合は、その治療

治療の目標は?
上記のような治療を行い、血糖値を80~250mg/dl(健康な子の正常値は70~150㎎/dlくらい)に維持することが目標です。これはわんちゃんの目標値より少し高めです。 ご自宅での治療の効果判定としてわかりやすいのが体重です。ねこちゃんの糖尿病治療中は体重が維持できているかがとても大事で、急激な体重減少があった場合、糖尿病のコントロールがうまくいっていないことが多いです。 当院では、ご自宅でのインスリン注射に慣れるまでは1週間ごとに通院してもらい、その後血糖コントロールが安定してきたら1か月ごとに通院してもらっています。 その際、体重測定、身体検査を実施し、血糖値や血糖コントロールマーカー(糖化アルブミン、フルクトミン)を測定します。また、必要な場合には、併発疾患の検査や、尿検査を一緒に行います。それらを総合して判断し、インスリンの量を調整していきます。

さいごに
前述したように、ねこちゃんの糖尿病治療では、食欲と飲水量が安定し、その子に合った適正体重が維持されていることが重要です。10~20%のねこちゃんでは、治療中に徐々に血糖値が低めに推移し、インスリンの必要量も減っていき最終的には糖尿病が治ってしまう子もいます。 ねこちゃんの糖尿病は適正に管理され併発疾患やケトアシドーシスなども発症しなければ、直接の死因にはなりません。寿命を全うして長生きする子も多いです。ご自宅での注射など、大変なことも多い病気ですが、飼い主さんと獣医師、病院スタッフとで一緒になって治療をしていきます。糖尿病のねこちゃんを飼っている方で、不安なこと、わからないことがある方はいつでもご相談ください。




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